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装置開発室 分子研リポート2007 | 分子科学研究所

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Academic year: 2018

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8-5 装置開発室

装置開発室は分子科学の新展開に必要な新しい装置および技術を開発する事と日常の実験研究に必要な部品および 機器の設計・製作に迅速に対応するという2つの役割を担っている。新しい装置の開発には,実験研究者との密接な 協力体制で取り組んでおり,所内研究者のみならず所外の実験研究者とも平成17年度に整備した施設利用を通じて 行っている。迅速な部品製作等は加工技能を持つ短時間契約職員の協力により対応している。この様に,装置開発室 の重要な業務である新しい装置・技術の開発と日常の実験研究に対する技術支援との両方に技術職員が取り組んでいる。

8-5-1 独自技術の開発

機械技術では,平成18年度から「脆性材料の超精密加工」として,国立天文台の先端技術センター設置の超精密 加工機を利用して,赤外光用の光学材料である硫化亜鉛(Z nS )結晶を用いた回折格子の試作を行ってきた。これら は名古屋大学及び国立天文台との共同開発として実施した。この共同開発は赤外天文観測用の光学素子製作を課題と してきたが,平成20年度は加工対象の材料をマイクロミキサー,バイオセンサー,レーザー用光学部品等に利用で きる石英ガラス,単結晶シリコン,銅タングステン,ハステロイなどの脆性材料(または超精密加工が困難とされる 材料)について進める計画である。

もう一つの「小径工具を用いたマイクロ加工」についての取り組みも3年経過し,100mm以下の工具を使うノウハ

ウが蓄積されてきた。平成19年度はサブミクロン駆動の X Y Z ステージを導入し,微小切り込みや精密位置決めなど 新しい加工法を応用しマイクロ部品の製作対応を進めつつある。これらは今後,多方面からの研究支援に利用できる ので,さらに技術開発を行っていく。

電子回路技術では,高速化や多機能化が進む電子回路の需要に対応するために,これまで C PL D や F PG Aなど,プ ログラマブル論理回路素子を用いたカスタム I C の設計・製作を行ってきたが,新たにアナログ回路を集積化する要 求に応えるための回路設計技術の導入を計画している。具体的にはバイオセンサーに用いる微小電流−電圧変換回路 のマルチチャンネル化を目的としたカスタム L S I の設計・製作・評価を行う。昨年度は東京大学大規模集積システム 設計教育センター(V D E C )を利用して,V L S I 設計支援用シミュレータによる増幅回路の集積回路設計に取り組み始 めた。

8-5-2 設備

装置開発室の加工,計測評価などの設備は,老朽化,性能不足,精度低下などが進み,分子研の新しい展開を担う 研究支援に影響するため,毎年,重要事項として対策の検討を進めている。平成16年度から中村所長の配慮で,計 測評価のための機器の一部が新規導入および更新され,先端技術から取り残される事態から踏みとどまっているが, 加工に関してはまだ十分とは言えない。今後さらに研究所の方針に合わせた設備計画を運営委員会等で検討していく 事とする。

高度な加工設備は機械本体そのものも高価であり,また設置環境を整え,維持管理など付帯経費も必要であること から,導入はなかなか困難であるが,他機関,他大学または民間企業を含め,すでに設備されている機器を利用する 方法も検討していきたい。現在,国立天文台が所有している超精密加工機の利用を行っている事例もあるが,これらは, 年度毎に共同開発として利用申請書を提出し採択される必要があり,研究支援や速やかな対応には向かない面もある。 また,新規な材料等を加工する場合には,加工条件の探索から始まるので,長期に亘っての使用,共同利用の場合の 研究内容との整合性,更には,利用料や派遣経費などの問題がある。これらを踏まえ,研究支援に効果的な加工機器 活用を調査・検討していく。

(2)

8-5-3 外部評価

装置開発室は平成16年度より,専任の教育職員を置かない技術職員だけで構成された施設として運営されてきた。 今年度はその新しい体制から3年が経過したことで,施設としての現状について点検・評価ならびに今後の運営方針 を検討するために,外部から下記の評価委員を招き外部評価を実施した。

所外評価委員:田原 譲(名古屋大学、教授)

山田省二(北陸先端科学技術大学院大学、教授) 以下に,各委員からの報告を掲載する。

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2007年9月14日 文責:山田省二(北陸先端科学技術大学院大学ナノマテリアルテクノロジーセンター教授)

(1) 外部評価委員会開催日時及び場所 日時:2007年8月27日(月)13:00–18:00 場所:分子科学研究所研究棟201会議室 スケジュール:

13:00–13:20 宇理須教授挨拶、分子研・装置開発室概要説明(鈴井出席)

13:20–15:00 電子回路グループ3名(吉田、内山、豊田)、ガラス加工1名(永田)業務報告 15:00–17:00 機械グループ5名(鈴井、近藤、水谷、矢野、青山)業務報告

17:00–17:30 施設設備見学 17:30–18:00 講評、意見交換

(2) 外部評価委員会での評価要望事項(装置開発室長より事前に提示)

①装置開発室の(果たすべき?)役割(所内、日本全体の観点から)。現状はその役割を果たしているか?

②分子科学研究における装置開発室の重要度。

③装置開発室の技術職員の技術レベルは? 機械,電気,ガラス。

④装置開発室が抱える問題。技術的(技術レベル?),組織的,将来的

⑤④の諸問題解決のためのアドバイスなど

⑥分子研(全体)に対する建設的批判提言。

(3) 評価レポート

以下,(2) の諸事項を参考に,委員会での業務報告に対する諸評価を項目別にまとめて記述する。 1) 全体の印象

インタビューが,発表者と評価委員2名というほぼクローズした雰囲気で,かつ比較的なじみのある場所で行われ たせいか,発表はおおむね良くまとまっており短い時間にそれぞれの業務のエッセンスが簡潔に紹介された。また, 発表態度からは,各自の業務に控えめではあるがそれなりの興味とプライドを持って取り組んでいる様子が推測され

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好ましい印象を持った。ただ,装置開発室の業務の全体の支援業務の中での位置づけ,あるいは他の技術職員グルー プとの比較のような話が余りなく,分子研全体の中での役割分担などもあまりよくわからなかった気がする(「分子 研リポート」には概要の構成員の項,及び技術室の項大体の説明はあるものの詳細な記述は無かったようである)。

「 構成員 」 の記述から類推すると,技術課1,2班を併せて装置開発室と称しているように感じられる。

昨今の国立大学等の独立法人化に伴い,「 競争 」 と 「 評価 」 が横行し技術職員でさえも様々な事務作業をこなすこ とが多く,ややもすると労働強化に繋がりかねない事態が散見されるようであるが,インタビューで聞き取った限り では,依頼業務を含む通常業務は所定の勤務時間内でほぼこなせている現状が確認された。このことは,日常的業務 で手一杯になること無く将来に向けた各々の基礎力・技術力の涵養にも一定の日常的時間が割ける余裕があることを 意味し極めて重要である。また健康上の観点からもこのような仕事の平均的ペースを将来にわたって維持することの 重要さは今後もっと意識されても良いのではないかと考えられる。

2) 装置開発室の現状等

2-1) 装置開発室の分子科学研究における重要度,果たすべき役割,現状など

いうまでもなく装置開発(室)の分子科学研究における重要度は一般的にはさらに増大しつつあると考えられる。 ただ当該分野における関連装置は,その種類は広く多岐にわたり,装置 1 台の規模は大きくなると同時にその複雑さ はさらに増しつつあると考えられる。そのような装置をたとえ小規模な物を中心とするにしても限られた人数と時間 ですべてをカバーするのは事実上不可能である。したがって,修理などのルーチン的仕事以外に取り組む創造的な業 務としては当然ある技術分野にフォーカスせざるを得ない。その分野を取捨選択する基準は,恐らく分子研全体の運 営方針に基づく中期計画に沿った研究開発計画に沿ったものになるであろう。分子研として発展させるべき研究分野 を支援する業務が人員的にも予算的にも優先されることになるのではないかと思われる。

既にインタビューの中で,いくつかの具体的な方針, a) 超精密機械加工/研磨

b) マイクロ微細加工 c)NMR プローブ d)NMR 関連各種回路 e) 各種極低温用測定セル

などが紹介されていたがこれらは恐らく分子研全体の研究体制整備,レベルアップの方向と一致しているのではない かという印象を持った。今後全体計画との関連をさらに意識した具体的な装置開発方針の提案と推進が内部的にも外 部的にもより望ましいのではないかと考えられるし,この種の具体的方針が 「 分子研の装置開発室 」 としての特徴を 発揮することに繋がり,より外部にもアピールするものになると考えられる。

2-2) 現在の装置開発室の技術レベル

ガラス工作に関しては良くわからないが,回路と機械工作に関しては,長年(技術室発足から30年)の蓄積を反 映し,かなり高いレベルにあるように思われた。今後このレベルの引き継ぎ,維持,発展が要請されているわけであ るが,人的リソースの増強が特にない場合は,成るべく特化すべき領域を広げずその分野での技術の最先端の進歩に 追随すべく日々レベルアップを図ることに集中すべきであろう。この際特に参考になるのは,外部,特に最先端の研 究を推進している大学,研究機関,企業との共同研究,交流を意識的に維持継続し,常に技術レベルの客観的なチェッ クを進めることである。常にリフレッシュされ維持された高い技術レベルこそがひいては内部からの要求にもより高 いレベルで答えることを可能にするものである。

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3) 問題点と解決策 3-1) 組織的観点

機械加工や回路試作に関する依頼件数と人手に関しては,現在の所ほぼバランスが取れているようであるが,今後 外部の依頼等も積極的に引き受ける,或は外部からの依頼が急増するような事態に立ち至ったときどのように組織的 に対応するかはあらかじめ考えておく必要があるかもしれない。特に組織を変更しないで対処するには,例えば機械 加工で既に実施しているような非常勤職員の活用を臨機応変に進める方策も有効であろう。但しこの際技術職員と年 齢的に近い若年労働者でなく熟年労働者の雇用を優先する配慮が良いかも知れない。

3-2) 技術的観点

全般的に見て装置開発室の現在の技術レベルは,分子研の研究に密接に関連する分野を中心にかなり高いと考えら れる。今後これを維持発展させるためには,新技術職員の採用(増員?)や現技術職員の日常的な業務の重要な一環 として学習と研修を継続することが必要である。技術室全体での長期人員計画の策定と学習・研修のための時間を現 技術職員に組織的に保証していくことがますます重要になってくると考えられる。

3-3) 将来的観点

分子研中期計画等組織全体の長期計画と連動して,各グループが中期目標,或は中期重点取り組み項目等を設定し, その達成目標と計画をそれぞれのメンバーが共有してその実現に協力して取り組むこと等が好ましいと考えられる。 現在の機械加工グループの当面の目標である「マイクロ機械加工技術(の開拓?)」に関しても,組織的裏付けと長 期的計画の中での位置付けがより明確にされることが望ましいのではないか。

3-4) 提言など

技術室,及び装置開発室の業務の内外の先端的研究との関連やそれらの研究への貢献をより組織的公式的に明らか にする仕組み(研究者が執筆する論文における貢献の明示,謝辞の徹底と貢献内容のデータベース作り及びその公開 等)を作ることが重要である。これにより技術職員が自らの仕事の意義を再認識するのみならず高いプライドをもっ て将来業務に取り組むことが可能となり,担当業務を意欲的に推進するための大きなモチベーションとなりうるもの である。

また「分子研リポート」によるとこれまで149名の技術職員が在籍し,111名が転出している。この流動性の高 さは技術職員としては他の日本国内の諸機関と比較しても特筆すべきレベルであると思われるが,異動等が比較的困 難と言われる装置開発室の職員に関しても流動性を高める工夫が日常的になされるべきであろう。この点に関しても 具体的な方向と達成目標等が議論されて良いと思われる。

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名古屋大学・エコトピア科学研究所 田原 譲

貴研究所より外部評価の依頼を受け,8月27日に装置開発室の現状,各技術職員の活動について説明を受け,ま た職場視祭を行ったので,ここにその所見を報告します。

(5)

現状では研究に役立つ装置開発に対してよく貢献されているように思いますが,装置開発室の今後の方向性に対し ては職員各自ができるだけ明確なビジョンを持つよう努力されるとよいように感じました。

(1) 活動状況

電子回路グループ3名,ガラス加工1名,機械グループ5名の各構成員が研究者への技術支援という本務について は,積極的にかつ誇りを持って取り組んでおられることを感じました。小さな組織でありながら,研究者の特殊な技 術要求に対して様々なアイデアを出して設計,試作,製作を行っている様子がよくわかりました。その成果はここで 作った装置をもとに行われた研究で,所内の研究者が研究賞を受けていることなどでも明らかと思われます。また柱 となる技術支援の他にも,工作実習の実施・技術研究会の実施・所長奨励研究の実施など間接的な技術支援や,独自 投術の開発を含めた自己研鑽が行われており,積極的な活動の様子がうかがわれます。

(2) 組織と運営

評価者が所属する大学には研究室に密着した形での仕事をする技術職員と,共通施設の技術職員という2種類の形 態がまだ残っているのに対し,分子研装置開発室では後者の性格の職員の集合体であり,少人数の組織としては明確 な役割分担と効率的な仕事の進め方のできる組織として確立しているように思われます。しかしその分研究者との密 度の高い交流がもたらす研究・技術両側面のレベルの向上という側面が少し弱められているのかもしれない,という ことを感じました。ただし評価者が所属する大学との間では,技術職員どうしの相互交流によりお互いの技術レベル の向上を図っており評価できます。

(3) 設備の状況

機械加工に関連した必要最小限の設備は揃っていますが老朽化した装置も目立ちます。現在の高度化した技術の時 代に汎用精密機械加工装置の導入は予算的に厳しいものがありますが,ある程度の投資は継続的に行われるべきと思 われます。その際この装置開発室の技術の特徴をより明確にしていくことが重要でしょう。またこれに関連し一見ハ イテクの対極にあるような古くさい加工装置を使いながら,研究の鍵となるような技術が生み出される可能性をなく さないために,熟練技術者の経験(例えばガラス加工など)を知的財産として残す努力をぜひお願いしたいと思います。

(4) 情報発信と社会貢献

業務報告集は分かりやすくよくまとめられており,技術情報の発信として十分レベルに達していると思われますが, 欲を言えばこの組織の特徴を強調して示すような工夫や,技術検索で所内外の研究者が成果を使えるような工夫(設 計・製作・計測などのノウハウのデータベース化,例えば用いた要求仕様・解決策・失敗例・成功理由なども加えて, キーワード検索で過去の経験が新しい装置開発に活かせるようなもの)もぜひ考えてほしいと思います。社会貢献と しては研究所の一般公開がその一端であり技術職員の方も十分貢献されているように感じました。

参照

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